メンタルヘルス・マネジメント

メンタルヘルスケアに関する事業者方針の意義

 メンタルヘルスケアに関する方針を事業者が表明することにより、活動の推進に結び付くことが期待される。

  • 「企業の事業活動にとっての重要性」→事業者から見れば限られた人的資源と資本をいかに配分するかが仕事。
  • 「自分の評価との関連性」→管理監督者を含む従業員にとっては自分の時間と労力をいかに配分して成果を上げるかが評価に直結する。

 組織や個人にとって仕事をするモチベーションにつながる。

 

 組織のトップが明確な意志を表明することで、「どうしてその仕事をしないといけないのか」について、「方針を実行することだから」と説明がつきやすくなる。従業員にとっても、メンタルヘルスケアに時間を割く正当性が存在することになり、安心して取り組める。

 

メンタルヘルスケアの方針の例

A社は、以下の事項を基本方針として、メンタルヘルスケアを継続的に実施する。

  • 従業員が働きやすい職場づくりを推進し、ストレスに関する健康影響リスクを低減することが、会社の発展と従業員の福利に不可欠であると考える。
  • 従業員のヘルスケアと経営者を含むラインによるケアを総合的に展開する。
  • 本プログラムで得られた従業員の情報は、プライバシーに十分に配慮して適切に扱う。

 この方針は、事業者がメンタルヘルスケアの重要性を認識したうえで、プライバシーに配慮しながらも、職場全体を巻き込んでの対策を継続的に実施する意思を明確に表現したものと解釈できる。

 

 一般に方針とは、関係するすべての人に周知することが重要。従業員は、方針を確認して、メンタルヘルスケアにおいて事業者が何を大切にしているか理解する。

心の健康づくり計画

 メンタルヘルスケアが、継続的に展開されるために必要なこと。

  • 体制・仕組みがシステムとして構築されている。
  • 実施が具体的な計画に盛り込まれている。
  • 計画に沿って活動が実施される。

 

心の健康づくり計画で定める事項

 2006年3月の厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、「心の健康づくり計画」で定める事項として以下のものをあげている。

  1. 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
  2. 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
  3. 事業場における問題点の把握およびメンタルヘルスケアの実施に関すること
  4. メンタルヘルスケアを行うために必要な人材の確保および事業場外資源の活用に関すること
  5. 労働者の健康情報の保護に関すること
  6. 心の健康づくり計画の実施状況の評価および計画の見直しに関すること
  7. その他労働者の心の健康づくりに必要な措置に関すること

 

心の健康づくりの体制と役割

心の健康づくりの体制で必要なこと
  • メンタルヘルスケアに関する方針を達成するために必要な役割や手順を文書としてさだめる。
  • その手順を実施できる人材を育成する。

 

メンタルヘルスケアにおける従業員の役割
  • 安全衛生委員会やその他の対策を検討する機会に積極的に参画すること。
  • 教育研修の機会を利用して、セルフケアについての技術や知識を得てセルフケアに努めること。
  • 事業場に存在するメンタルヘルスケアにおける各種手順やルールを理解して、適切な対応をすること

 など。事業場の心の健康づくり計画を理解し、自らの役割を果たす努力をすることが大切。

 

心の健康づくり計画の実施と評価

メンタルヘルス計画に基づき、継続的に実施されるために必要なこと
  • 具体的な目標の設定。
  • 目標を達成するための計画の策定と実施。
  • 目標の達成度の評価を行う。

 

目標の設定の仕方

 目標は評価項目と具体的な達成目標からなる。また、目標は方針との関連が明確である。
 上記の方針の例では、

  • 働きやすい職場形成がどの程度達成できたか
  • ストレスに関連する健康影響のリスクをどの程度低減できたか
  • セルフケアおよびラインによるケアのプログラムがどの程度実施されたか
  • プライバシーの配慮は適切にされているか

 といった事項が指標になる。

 

達成目標は数値で設定することが望ましい

 ”「自分の職場は働きやすい環境である」と答える従業員の割合が70%以上”など。
 達成できなければ、改善を行う必要がある。

 

計画に盛り込むこと
  • 通常、具体的な計画は年間計画といった形式で期間を定めて策定される。
  • 策定の進捗状況を毎月、(安全)衛生委員会で確認していく必要がある。
  • 年間計画には通常、教育やリスク評価の実施などの具体的な項目が盛り込まれる。
  • 維持改善するための内容(計画立案、目標の設定、評価の実施、文書類の改定など)も計画に盛り込むことが望ましい。

 

まとめ
  • 心の健康づくりにおける目標や計画は、事業者が方針を達成するための具体的な方策。
  • 達成に向けた努力を積み重ねることで方針の実現につながる。
  • メンタルヘルス対策が成果を上げるには、従業員一人ひとりが積極的に役割を果たすことが重要。
  • それができるためにも、その基本となる目標や計画を確実に理解することが大切。
  • メンタルヘルスケアも安全衛生活動の一部である。

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